建築こぼれ話 第4話 ~ラ・ルース~

壁にぶち当たって、悩んでじたばたしていると、ふと助けてくれる人が現れる。そんなお話しの第4話。

ラ・ルースの相田さんは、地元材利用のパイオニアだ。
私も、せっかく建築業界に身を置くことになったのだから、輸入材ばかり使うのではなく地元木材を使った建築がしたい、とうっすらとは考えていた。けれど、初めてのことばかりで、手も頭も回らず「いつかね」と後回しにしていたところがある。”目標”ではなく、まだまだ”夢”だったのかな。

株式会社ラ・ルース代表 相田秀和氏

ところがそこへ、森林組合の佐藤さんが「地元材つかえる?」と相田さんを紹介してくれたのだから、渡りに船、念ずれば通ず、というもの。早速工場へ伺い、地元材のこと、木工のことについて教えてもらうことにした。

ラ・ルース本社工場 小田原市中央を流れる酒匂川沿いにある。自然豊かなロケーションにあり周囲は意外にも静かだ。

地元材

神奈川県西部、特に小田原は干物やかまぼこなどの海産加工品で知られるけど、実は三方を山に囲まれた地域なの。
山にはスギやヒノキが植林されているんだけど、その消費は地元には根付いていなかったそう。

これは全国的な流れらしいのだけど、戦後に国土復興で盛んに植えられた木々が70~80年を経て伐りだしどきを迎えた。
ところが、安い輸入材に押されて林業や製材業が衰退してしまった。だから細々と生産される県西部の山々の木も、多くは県の材木市場へと流れている現状らしい。

ではどうして相田さんは地元材を使うようになったのか。そこに材木業界のしくみが関係していた。

左:相田代表 右:C’ZB代表安田   木の話し、林業の歴史、木工技術の話しなど話題は尽きず、あっというまの3時間。
一番玉

山から木が伐りだされると、建築材(大工)→家具材(家具屋)→木工材(木工屋)の順に買われていく。つまり、材が大きい順番だ。

4mや3mといった太く長い、それでいて節の少ないものは、まずは大工さんが良質と判断し、買い取る。次に家具屋さんがもう少し小さな材料を買い付ける。最後に木工屋さん。製品自体が小さいものが多いので、たとえ短くても、多少節があっても、曲がっていても、その部分を切り取ってしまえば問題ない。だから小さくてもいい。

伐り出された一本の木は、多くはトラックに効率よく載せられる4mごとに切り揃えて山から運び出される。
木というのは、根元の最も太い地面の生え際から最も細い枝の先まで、ある。だから、両端は切られてしまう。特に生え際から2mくらいは、『一番玉』と呼ばれ、通常は捨てられてしまう。

なぜ捨てられるの?

太くて立派な部位なのにもったいない!なんで?と伺ってみると、なるほどの理由。

そもそも一番玉は長さが2mと大工さんが使う材木には短い。そのうえ、生え際だから曲がっているので材木としては上手く切り出せない。だから安い。

さらにトラックへ載せようすると、通常の2倍の労力がかかってしまう。例えば長さ4mの2番玉、3番玉を10本積むなら10回の作業で終わるけど、短い1番玉は20回作業しないとトラックいっぱいにならない、という具合に。手間がかかる割に儲からない。

だから、山の中に置き去りにされてしまうことが多いんだって。

これを正価で仕入れて木工材として利用しているのがラ・ルース相田さん。
一見なんの変哲もない材木だけど、その誕生過程や流通過程には、いろいろな事情があるものだと。

さて、そのサンプルをいただいて、早速3連棟に貼り付けてみた。
うんうん、なかなかいい見た目じゃないか!

木目がすーーーーぅと、不規則なのだけど、規律があるようにもみえる。
これは人造物ではなしえない自然の営みの結果というか。木が一年一年を必死に生きた証が年輪となって表れたもの。これを美しいとせずにはいられない。

玄関周りは見た目でその印象はぐっと変化する。
玄関周りは見た目で建物の印象がぐっと変わる。だからこそ本物の木を持ってきたかった。

さて。
次回はこの木の成長についてお話ししましょうかね。

オクツP

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