壁にぶち当たって、悩んでじたばたしていると、ふと助けてくれる人が現れる。そんなお話し。
そこで重要になるのが、企業の「顔」としての玄関まわり。
お客様が初めて訪ねてきてくれて、「どうぞ」とお迎えする場所。
だから、整然と整っていたり、いい空気が感じられる、清々しい雰囲気、とかそういうのを大事にしたい。
これは個人の住宅も一緒。
新築の住宅街を歩いていると、それぞれのお宅の玄関の佇まい、にその建物のご主人の気持ちが表れているようで、とても興味深い。

観葉植物が置いてあったり、ポストが素敵だったり、軒が深くて傘を畳むときに雨に濡れないように、とか、道路からの目隠しがしてあって家の中が覗かれないようにとか。
「どんな思いで設計したんだろう」とか、つい楽しくなってキョロキョロしてしまう。(傍から見るとちょっとアブナイひとかも…。)
逆に、植木や雑草が伸び放題だったり、枯れた植木鉢が放置してあったり、新聞受けが溜まっていたりする玄関は、どことなく淀んだ空気さえ感じる。
さて、「3連棟」。
外壁とドアフレームの金属部分をブラックにしたので、玄関の壁と軒天井は暖かみのある木がいいなと。メタリックな外観がクール、といえば聞こえはいいけど、ちょっと冷たい感じもあるからね。
そのメタリックな黒にはウォルナットやレッドシダーとか、明るすぎない木目が合うかしら、と資材屋さんといろいろ相談するけど、なかなか希望のものが見つからない。(そりゃそうよね。見た目だけで選べるほど現実は甘くないのデス。)

杉材ひとつとっても、切り出し方や色味で様々な個性がある。
外壁には耐久性とか不燃性とかの機能面が求められるし、個性を出そうと板張りや塗り壁にしようとするとぐっと高くなってしまう。だからなのか、一般的にはなかなか選択肢にならないのかな、と思う。
機能と経済性のバランスを考えると、外壁サイディングでぐるっと囲ってしまうのがいちばんよい選択、ということになる。
むろん、移動建築にとっては移動時の「振動」が大敵であるので、塗り壁は最初から選択肢にないのだけども、どうにかならんものだろうか。
そんなわけで、無垢の板材から木目調の外壁材、サイディングに至るまで探してみる。探してみて驚いたのは、木を模倣した木目調の外壁材が、実に精巧なことだ。
型取りの技術や塗装技術なんかも、日進月歩なのだろうと。
これは!とさらに調べに調べる。
しかし、だ。ふと我に返る。
やっぱりレプリカはレプリカであって、ぱっと見は見分けがつかないけど、どことなく雰囲気というかオーラというか、本物の木にはかなわない。
せっかくの玄関なのだから…と思うにつれ、決められずに時間と知識ばかりが膨らんでいく。
そんな時、Facebookでそんな悩み投稿をみた古い古い友人が声をかけてくれたんだ。
「紹介したい人がいるけど、どうかなぁ」
…建築こぼれ話 第二話~木縁は奇縁~ へつづく