建築こぼれ話 第3話 ~社員をサーフィンに行かせよう~

小田原市森林組合の佐藤さんが、C’ZB工場にやってきた。
久々に再開したわけだが、何せ高校卒業以来ろくに話したことがない。

「どうも!朝早くから来てくれてありがとう!」と発してみたものの、どこか自分がぎこちない。



「初めまして、ラ・ルースの相田です」



彼の隣には、Tシャツ&短パンに日焼け肌。もじゃもじゃヘアーからのぞくニカッとした笑顔がチャーミングな紳士。…もう、360度どこからみてもイケおじサーファーじゃないか⁉

初対面にも関わらず、その風体から「だいじょうぶかぃ…」という不安な思い。
その反面、どこかワクワク期待せずにはいられない自分。
それは、私にとって”サーファー”との出会いは、自分の生き方をたびたび方向付けてきたからだ。

サーファー

失礼にも、もともと”サーファー”という人種が好きではなかった。若い頃からココナッツオイルの香り漂う海水浴場とかビーチとか、人が集まる華やかな場所が苦手だったことに始まり、そのうえ知識も関心もないから「ロン毛」「ナンパ」「チャラチャラ」「ローカルのいやがらせ」といったドラマや世間のステレオタイプを鵜吞みにしていたことが原因だ。おまけに社会人になってすぐに配属された部署の先輩(のサーファー)と反りが合わかなかったことも”サーファーぎらい”に拍車をかけた。

ところがその後20代の終わり頃、ある程度仕事を任せられるようになった私は、仕事を通じてあるサーファーと出会う。その彼とは、あらゆる仕事の面で衝突し、ぶつかり合った。


「だからサーファーってやつは!怒」という感情とは裏腹に、次第に仕事を進め深めるうち、すれ違う原因が仕事観というか職業観が自分とは異なっていると気づき始めた。仕事に対する価値観の違いである。


これまで「会社のミッションを達成することが、社員としての使命である。」と教えられ実践してきた。
そこへ「海のためにできることをするのが、ひととしての自分の使命だ。やったことがお金になるときもあるし、ならないときもある。」と考え、収入や評価を気にも留めず、ひたすら信念に従い行動する。そんな彼だった。
「仕事は組織のために」行動している自分がずいぶんと小さな存在に思えた。しかも同世代だったことも刺激的だったんだろう。

サーファーは波を選ぶことはできるが、波を「作る」ことはできない。
作るのは自然の力であって、波乗りはそのバイブスを感じとって波に乗るんだ。

的なことを言っていたような、ないような。



社員をサーフィンに行かせよう

そんな頃また、一冊の本と出合う。
「社員をサーフィンに行かせよう~パタゴニア創業者の経営論~」イヴォン・シュイナード著(2007)

『社員をサーフィンに行かせよう』(Let My People Go Surfing) は、パタゴニア創業者のイヴォン・シュイナードによる自伝兼ビジネス哲学をまとめた書籍です。彼の人生と、彼が築いたアウトドア用品メーカーであるパタゴニアの企業文化を中心に、環境問題への取り組みと持続可能なビジネス運営についての洞察が語られています。  出典:ChatGPT

利益追求に走らず自然との共生を謳う経営だとか、仕事とプライベートのバランスを重視した働き方だとか、今となってはCSRとかワークライフバランスとか言われ、あたりまえのように言われるけれど、「早出、残業あたりまえ」「めざせ!売上目標」とされた当時にしてみたら、それはそれは影響されたもの。

けれど、その思想は大きな組織の中では昇華することもなく、かといって説得もできない若造は「変な奴」「とんがったヤツ」認定され弾かれるのだが…。
それはさておき。

“I don’t believe in the separation of work and play. If you love your work, if you love your play, there’s no reason to be bitter at work or frustrated at play. At Patagonia, we have always encouraged employees to pursue outdoor activities. For some, that means heading to the mountains to climb; for others, it’s catching a wave during lunch. This freedom isn’t just good for their well-being, but for the company too. Happy employees are productive employees, and they bring passion to both their work and their personal pursuits.”

「私は仕事と遊びを分けて考えることを信じていません。もし仕事を愛し、遊びを愛しているなら、仕事で不満を感じたり、遊びに挫折感を抱く理由はないのです。パタゴニアでは、常に従業員がアウトドア活動を追求することを奨励してきました。ある人にとっては山に登ること、他の人にとっては昼休みに波に乗ることかもしれません。この自由は彼らの幸福にとって良いだけでなく、会社にも良い影響をもたらします。幸せな従業員は生産的であり、仕事にも個人的な追求にも情熱を注ぎます。」 訳:4o

あのパタゴニアの創業者ですからね。
もう、説得力が違いますよ。頑固一徹、自分のことしか信じない私だって、納得してしまうほど。

身なりや服装、敬語や態度も、その人の表面的な一面に過ぎず、本質はその人の魂にこそ宿る。
板一枚で地球と対話するサーファーにとっては、魂=心の持ち方こそが価値なんだ。

なんちゃってサーファー(チャラ男)と、本物のサーファーを同じにしちゃいけない、と学んだ。
そんなこんながあって、目の前の”素敵な身なり”の紳士に、期待せずにはいられなかった。


ラ・ルースの相田さんも、魂で生きる人だった。
~第4話へつづく~

オクツP

<関連記事>
建築こぼれ話 第一話~新たなる出会い~ 
建築こぼれ話 第二話~木縁は奇縁~

#ラルース
#ラ・ルース
#相田秀和
#小田原森林組合

#森林組合

#森の力

#小田原市

#CZB

#シーズビー

#移動建築専門工務店

#モバイル建築

#ユニットハウス

#コンテナハウス

#タイニーハウス

#建築こぼれ話

タイトルとURLをコピーしました